![]() ベトナム人民軍と南解放戦線の被服考証 /原文翻訳・知野 龍太/加筆修正・九月 清隆 |
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人民軍と南ベトナム解放戦線の被服および階級章 1958年以前の被服着装 第一次インドシナ戦争(抗仏戦争)の初期、北ベトナムへ中国からの援助が本格化し、補給物資が大量に流入する以前には、兵員が着用していた被服に全く統一性がなかった。 1958年以前は文字通り「使用できるものは何でも使用する」と言う状況であった。また、なんらかの被服が主に部隊単位で制服として兵員に着用された場合は明らかに、中国軍被服の特徴を踏襲した物だった。 1958年までの人民軍固有の被服の特徴としては竹を素材とする手作りの多種な防暑帽(サンヘルメット)の着用がある。また被服体系の特徴としては、階級と兵科表示の不徹底がある。このなかで将校のみが広角金星(ベトミンタイプ)の帽章を着用する場合があった。 ![]() ベトミン(越南独立同盟)期・徽章 1957年以降、軍の大規模な被服の統一化が開始された。しかしながらこの軍の整備、近代化の方策も他国の正規軍と比較しても以前よりの非統一性は解消されたとは言えず、被服などの差異は依然として存在した。 人民軍の被服の変遷は大きく以下の三期に区別できる。 (1)1958年以前。 (2)1958年より1981年。この時期に主要な制服規定が確立された。 (3)1981年とそれ以降。この時期に制服規定が改定されている。1996年にも現在の物に改定。 1958年に人民軍は軍近代化の一環として制服の統一化を開始した。カーキ、濃いグレー、タンの色調の野戦服がもっとも多数だったが、第二次インドシナ戦争(抗米、ベトナム戦争)では、物資の不足および非統一な援助の拡大のため、この被服色調の差異の範囲は非常に広いものになった。また未熟な染色技術による被服の退色もそれに拍車をかけた。 共通支給野戦服は通常ダークグリーンの色調であった。兵用はボタン閉鎖のポケット2個が胸部付く長袖シャツ、将校および下士官はボタン閉鎖の4個ポケットが付く上衣(シャツではなくジャケット)だった。 これに対応するトラウザースはポケット2個か3個を備えたもので、下士官および兵用の物には足首部分をループとボタンで締めることもできた。ただしこの機能を省略した物も数多く製作された。 この野戦服には真鍮またはアルミニウムのバックルが付いた布製ベルトとともに着用された。この時期には将官級と佐官級に着用される礼服が制定されるなど、被服の近代化が図られたが、戦時下における軍全体の被服の統一化は遅々として進まなかった。 階級章と兵科の採用 1958年の近代化の時期に人民軍は正式な階級と兵科の表示を有する階級章体系を制定した。最上級は上級将官から少尉まで、少尉以下の下士官、下士までが階級を表示する肩章が存在していたが、これに加え、中国人民解放軍や旧日本陸軍を参考にした以下の58年式兵科徽章が襟章となって着用されるようになった。(※ベトナム戦争時はすべてこの58式徽章となる) →【階級一覧】 ![]() ![]() 中国人民解放軍55年式襟章(上)とベトナム人民軍58年式襟章(下)の対比(表・裏) 戦車科 戦車 砲兵科 交差した砲 騎兵科 馬蹄の上に交差した小銃と剣 化学戦科 コイルの中に放射する光線 工兵科 歯車の上に交差した鶴嘴とシャベル 衛生・医療科 円で囲まれた赤十字 法務科 交差した剣と盾 軍需部 円で囲まれた鍬と稲穂 通信科 円で囲まれた通信音波 輸送科 トラックのサスペンションの上にハンドル 1965年になると、空軍がブルー地に金属製の翼という独自の兵科章を制定し、海軍もグリーン地に赤い錨の独自の兵科章を制定した。 同時期の南ベトナム解放民族戦線の被服体系 人民軍が階級・兵科体系を持っていたのに対し、ゲリラ組織から発展した解放戦線の被服は、黒、グレーの農民服の流用、カーキが主のベトミン期の使い古した野戦服であった。農民服、パジャマ形式の被服は南ベトナムでは一般的に広く着用されていた物で、解放戦線部隊はこれを現地調達していたものである。長袖、あるいは半袖のシャツには襟が無く、対応するトラウザースにはポケットがなかった。これは男性用と女性用があった。 解放戦線兵士はホーチミンサンダルを好んで使用したが、これは人民軍兵士の正規のキャンバス製の戦闘靴と対比を成す物だった。サンダルは使用済みの自動車タイヤのトレッド面を使用して製作され、ゴムまたは布のストラップで足首を締め固定して着用された。解放戦線兵士はまた、円錐状のすげ笠(いわゆるクーリーハット)を着用したが、戦闘時にはより実戦的なブーニーハット(ジャングルハット)を着用した。 1970年以降、解放戦線の発展である臨時革命政府、南部解放武装軍はその構成員が北人民軍を主力とするものとなり、南部解放軍正規部隊のその被服は民間用のものの着用が廃止され、黒、茶色、またはタンの綿製野戦服に統一化されていくことになった。この被服には襟があり、ボタン閉鎖の2つのポケットがある。階級章、兵科章は存在しなかったが将校は着用するシャツ(このシャツには通常エポレットがついていた) により、また装備する拳銃ベルト、シャツのポケットにつけたペンの数で識別された。また南部武装軍兵士は稀ながら固有の帽章を着用した。これは北人民軍の帽章に類似した物で、これに解放軍を表すブルーを加えた物だった。この帽章は主にピン留めされ着用され、稀に胸に着けることもあった。 ![]() 臨時革命政府・南部解放武装軍徽章 ![]() 表紙に戻る |